2018年1月26日金曜日

小林良彰(歴史学者東大卒)の西郷隆盛論、理想国家は十年続いた

あまり意識されていないが、西郷隆盛の目指す理想国家は、鹿児島県で約十年続いた。世界史的な目で定義すると、中間層支配の理想国家であった。そのようなものが他にあるかというと、アメリカ合衆国の内部にいくつかあり、今なお残っているところと、昔はあったがやがて周のに資本主義に飲み込まれてしまった場合とに分かれる。
クロムウエルのイギリスでは、パンとともに信仰を食べさせられたといわれ、ピューリタンの厳格な信念が国民に強制された。このカルヴァンの思想の中には、ぜいたく、投機、を罪悪とみなす、反資本主義の思想が強い。だからロンドンに密集している大商人、銀行家にとっては迷惑な思想になる。それでも我慢したのは、王党派の巻き返しが怖かったからである。この脅威が薄れると、今度はクロムウエル排除の動きが出てくる。その微妙なところで、彼は死んだ。
西南戦争までの十年間は、鹿児島に中間層支配の理想国家が独立してあり、東京を中心に、商人支配の新政府があった。新政府のもとで、商人支配は急速に進化して、新興企業家が肩を並べ始めた。三菱の岩崎、銀行の安田、生糸の田中平八、鉱山業の五代などなど、強力な基盤を持ち始めた。やがて自信をつけた新政府は、自分の軍事力を持って国土の完全統一に乗り出す。これが事の本質である。

0 件のコメント:

コメントを投稿